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DATE: 2007/01/12(金)   CATEGORY: 未分類
阿部泰郎氏の書評
『日本文学』2月号に、松本郁代さんの『中世王権と即位灌頂』(森話社)の書評が載っています。評者は名古屋大の阿部泰郎さん。
お持ちの方で、いわゆる「中世即位法」に興味のある方は、ぜひご一読ください。非常に辛辣、かつ非論理的な批判が展開されています。松本さんの本にはたしかにいろいろな瑕瑾がありますが、阿部さんの書評は彼女の主張のはしっこをつつくようなものに見えます。

阿部さんの批判の的はずれな点、あるいは尻切れトンボ的な部分の一例として、黒田俊雄氏の権門・顕密体制論と松本さんの見解との差異がほとんど明確にされないまま、阿部さんがお好きな丸山静『熊野考』へとなだれてゆく部分があります。松本さんが丸山静を論のしめくくりとして持ち出したことは、私にも違和感がありましたが、ちょうどその足をすくうような阿部さんの論述にも説得力が見いだせません。

また、阿部さんは「即位法の一体何が(王と王権における)より本質的な聖なるものに当たるのか判然としない」と言いますが、この「本質」をあえて追求しなかったのが松本さんの論ではなかったのでしょうか。そして、阿部さんはかつて『湯屋の皇后』であえて「聖なるもの」の定義をしない、という事あげをしながら、ここでは松本さんに「聖なるもの」の定義を迫るという矛盾を犯しています。

そのあとは、ご自分の関心にひきつけたダキニ天の話や、自分の新しい編著の紹介、道順と文観のこと、などを述べてゆき、まるで自説の開陳のようです。
宝珠と舎利の関係について松本さんが触れていないのは事実ですが、それをもって「大きな亀裂」と評するのはあまりに酷でしょう。自分の関心事がもっとも大切な問題であり、それ以外のことは些末である、とでもいうかのような態度が、厳しい言い方かもしれませんが鼻につきます。阿部さんは、学会発表の質疑応答でしばしば自説の展開を長々とされ、司会者から「もっと手短にお願いします」とたしなめられることが多いのですが、今回の書評もそれとまったく同じ手法で書かれてしまいました。

なお、空海仮託の『御遺告』を「真言宗の存在証明であり根源的テクストないし聖遺物であれば」という一文がありますが、『御遺告』を西欧的概念である「聖遺物」と呼ぶのはいかがなものでしょう。私は舎利と聖遺物との近似を述べていますが、舎利を「聖遺物」を称したことはありません。阿部さんは「聖遺物」の研究書を読んでおられるのでしょうか。どうも、感覚的にお使いのように思えます。(阿部さんは「イコノロジー」という用語もよく使われますが、果たしてバノフスキーを読んで書いているのか、不明です。言葉の概念規定は非常に大切であり、著者の立場の表明にもなるものだと思いますが)。

書評の最後で、「もはや書評どころではなく、それは評者自身にはね返ってくる課題に他ならない」と結ばれていますが、これから阿部さんがどのように自分の答えを返してゆかれるのか、期待して待ちたいと思います。
「阿部ワールド」と私がかつて名付けたことがある、阿部さん独特の閉じられた物語世界的研究が、今後いかに開かれてゆくのかわかりませんが、松本さんの著書が触媒となることは言うまでもないと思います。

今回は、本日とどいたばかりの『日本文学』をネタに、緊急執筆いたしました。どうしても書かずにはいられず、また、阿部さんへの個人的手紙というかたちではなく、もっと中世研究者に議論をしてもらいたいために、ブログという媒体にしたことを申し添えます。阿部さんとは20年以上にわたる交誼があり、このような批判を不十分なかたちで行うことは確実に不興を買うと思いますが、阿部さんへの批判をする中世研究者がほとんどいない、いや、見たことがないうえ、最近の海外における日本中世研究者が阿部さんの論を定説であるかのごとく無批判に引用することへの疑問があったので、あえて書きました。
阿部さんにも言いたいことがおありでしょうが、さらに詳しい反論はどこかの紙媒体で書きたいと思います。
もし今なにか反論がありましたら、おつれあいにでもやり方を聞いて、この「コメント」に書き込んでください。
逃げも隠れもいたしませんから。
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