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DATE: 2007/01/14(日)   CATEGORY: 未分類
谷崎潤一郎旧邸「鎖瀾閣」の危機を憂う
神戸の大学にうつって約二年がたちましたが、なかなかなじめません。京都は「北陸のはし」ですが、神戸は完全な瀬戸内海文化圏なので、そもそも風土からして違います。京都は神戸より気温も2度くらい低いですね。神戸に行くと、あまりに空が青いので驚くことが多いです。

私の勤務する大学は「岡本」という住宅地(高級住宅地らしいのですが、平地ではさほど高級な家は見ません。たぶん高台にあるんでしょう。なお、マルチーズなどの小さい犬を散歩させている人が多く、学生がそんな犬を「岡本犬」と呼んでいます)にありますが、岡本といえばなんといっても谷崎潤一郎の旧宅があるところとして知られています。
住吉川という川ぞいに、有名な「倚松庵」が移築されていますが、最近、山側の「鎖瀾閣」(さらんかく)が新規復元のうえ公開されることになりました。ここでは、「痴人の愛」が執筆されており、また、谷崎自身のデザインによる建築物ということで、私はかなり楽しみにしていました。(なお、私は谷崎の作品の一部のファンですが、一部は嫌いです。また、谷崎がペルシャ猫を愛したというところは共感します。ただね、「タイ」から来た猫に「ふぐ」を食べさせて中毒死させたのはあまりにかわいそう。それから、いかにかわいかったからといって、愛した猫を剥製にするのも痛々しいものです。そういえば、開高健も「キンチャン」という猫を剥製にしていましたねえ。剥製って、残酷なものですよ。)

ところが、大阪朝日新聞の主催する「関西21スクエア」という、なんというんでしょうか、関西の「文化人」みたいな人たちの集まりの会報(91号)を読んでいたら、武庫川女子大学のたつみ都志さんが、「鎖瀾閣の復元が危機的状況である」というエッセイを書かれていて驚きました。

それによると、周囲の環境上の問題も大きいらしいのですが、私がいちばん気になったのは、「ナオミの家」を併設することにNPO法人の人々が会議で反対したという点です。ナオミの家は、大正末期の文化住宅の典型らしく、それを併設することで谷崎文学への理解を深め、実際に体験してもらおうというものだったようですが、その反対の理由というのが、(ここからたつみさんの文をそのまま引用します)「理由は、『痴人の愛』の家は教育上よろしくない、子供にどう説明すればいいのか、というのだ」というものでした。
笑ったらいけません。こんな時代錯誤な人々がまだいるんです。『痴人の愛』が「古典」化せず、人々の意識のなかに「あの姦淫文学」とかいった感想を残しているのであれば、それはそれですごい影響力でしょうが、おそらく反対した人たちは、ちゃんと本文を読んでおらず、イメージだけで、あるいは映画などで判断したのではないでしょうか。

子どもに谷崎文学を読ませてなぜ悪いのでしょう? 子どもには「坊っちゃん」くらいが適当だというんです? それは、「坊っちゃん」に描かれたオトナの暗い意地悪さなんかをわかっていないしるしで、結局漱石をバカにしたことにもなりますよ。また、きょうびの子どもって、オトナよりよっぽど毒を持っているもんです。甘く見てはいけません。

たつみさんが長文のエッセイを寄稿された気持ちはわかる気がします。あまりに無理解、あまりに勉強不足な神戸の住人たち。せめて地元の「文化遺産」(という言い方もよくないのですが)くらい大切にしなければどうしようもありませんよ(この、地元民ほどよくわかっていない、というのは京都でもまったく同じ。よそから借りてきたイメージ戦略で売ろうとしていますが、このままなら東京文化圏のディズニーランドとして消費されるだけです。もっと独自の文化をアピールしなければ。そのためには勉強しなければ。また、広島の三次市というところにある『稲生物怪録』について講演しにいったところ、地元の青年会の人が「いのうもののけろく」と言っていました。これが間違いだということをなぜか誰も言いません。間違いです。『国書総目録』ひいてみてください。「いのうぶっかいろく」で出ていますよ。その他にも例はあります。ちゃんと勉強してください)。

ということで、楽しみにしていた復元は当分見送りらしいのです。関わってきた方々の無念が身にしみます。「文化」を大切にしない日本人の典型を見るような気がしますね。神戸って、もっと進んでいるかと思っていたのに、なーんだ、後退してるねえ。中華街や異人館だけでは観光客はもう来ませんってば。阪神間に散在した「遺跡」や「有形文化財」はまだまだたくさんあるのですから、それを生かす方法を考えるべきでしょう。神戸ブランドは、神戸ビーフだけではないのです。
ほかにも、たとえば播州にはかなりの数の小規模な古墳が点在していますが、ほとんど観光資源になっていません。播州ったって、赤穂浪士ばかりじゃないんですよ。姫路城だけじゃないんですよ。古いお寺は、数では京都や奈良に負けますが、「とっておき」のものがあるんです。でも、いかんせん、交通が不便ですね。ほんとうにもったいない。京都や奈良は俗化の一途をたどり、神戸は相変わらずの異国イメージばかり、大阪も「吉本」の芸人さんのようなお笑いのイメージばかり(これも交通が不便ですが、大阪南部にはまだまだ知られていないお寺や遺跡がごろごろ。市内でも、平野区などは中世の町並みが残る貴重な地域です)、滋賀県のイメージも悪すぎます(ど田舎、とか、琵琶湖だけ、とか)。
なんとかしろ、関西!


景気回復した、などといいながら、関西は地盤沈下し続けているように思えます(実際、関西空港は毎年地盤沈下していますが)。
一度は関西を捨てようと思った私ですが、今は一生関西人(もっと狭い範囲でいえば京都人)でいようと決めたのです。大学がいっぱいある関西なのに、大学人が地域と連携をしていませんし、してもしょうもないプロジェクトだったりして、威力を発揮していません。

ずっと先、今の予定では3年後くらいですが、『京都論』(仮)をS社から出すことになっています。当然書き下ろし。準備にかなり時間がかかるでしょう。その予備戦として、今年はいくつかの場所で関連する講演をします。これは、私なりの関西、および京都活性化の試みです。
担当者からは「京都追放覚悟で思いっきり辛辣に書いてください」といわれましたが、あの入江敦彦(『イケズの構造』新潮社、ほか)さんならイギリスに帰ればいいけど、私はもう京都以外帰るところはありません。石投げられても、しぶとく住むもんね。

関西は、もしかすると独立してもいいかもしれません(冗談半分、本気半分)。昔、(三〇年近く前)福田紀一さんという『VIKING』の同人で高校の先生をしていた方が、関西が独立する小説『霧に沈む戦艦未来の城』(河出書房)を書きました(福田紀一さんの小説は全部持ってる。ファンですが、もうぜんぜん書かれませんね。どうなさっているんでしょう? なお、小松左京さんの「抜け穴考」でしたか、大阪城埋蔵金の話に登場されています)。
近未来に関西が独立してしまう話ですが、今思うとかなりリアリティがあります。関西に観光に来る輩からは、「関銭」とればいいんじゃないでしょうかねえ。それくらい考えてほしい、今の関西の弱体的状況です。

本日は、なくなったお正月を少し取り戻すためにマブダチと少々飲みました。マブダチも、お正月は書き下ろしで手一杯だったのです。彼女の名前は、次回の本の後書きにて披露しましょう。
でも、お互い「猫持ち」なので、ちゃんと最終電車の一本前で帰宅しましたよ。
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